3/19発売の吉田修一さんの新刊、橋を渡る、読みおわりました。

帯コメントには以下のように書かれていました。

「いまなら、未来は変えられる。大切な人の不倫、不正、裏切り。正義によって裁くか、見ないふりをするか。やさしさに流されてきた3人の男女が立ち止まるときー。新次元の群像ドラマ、ここに誕生。」

まさにこのコメント通り、今まで吉田修一さんの作品を読んできた方からしたら新次元な作品で、思わず「えっ」となるような展開だったのではないでしょうか。僕はそうなりました。

物語のキーとなる登場人物の断片的な話が、時系列もばらばらに語られていき、それらが最終的にどのように一つにつながっていくのか、発散していく物語がどのように収束していくのか、結末が気になりながら読み進めるのですが、最後の落とし方が今までとは異なる次元だったので、そこに戸惑いながらも読み進めるときの緊張感や高揚感はさすが吉田修一さん、というものだったと思います。

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一つの正しさを貫き通すがために全てが崩壊することもありうるのだと。
あるいは、その正しさは正義でも何でもなくただの利己的な主張でしかなかったか。
正しさという正義の旗印を前にして少しの迷いも過ちも誤りも許されることのない世界というのは、それはそれで非常に窮屈で。
としても、どこまで寛容でいればいいのか。どこまで受け入れればいいのか。
ここまでにしよう、と明確に線引きすることのできないことばかりの中で、自分の利益を全く考えずにいるというのも不自然で。

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今年の9月には「怒り」の映画化も予定されていますし、新たな吉田修一さんの読者も増えると思います。
これから吉田修一さんの作品を手に取る人には、この「橋を渡る」ではなく、「怒り」「悪人」「路」「横道世之助」などの長編ものから、あるいは短編で比較的読後感がやさしめで余韻に浸るような「ひなた」「パレード」「空の冒険」「初恋温泉」などから読み始めた方がいいかなと、個人的には思います。