2017年、GW開始。

日本中、何処かの誰かが各々の理由でおでかけをしていたり、していなかったり。この連休にお休みを取って移動する人はどれほどになるのか。向かう先を示し合わす訳でもなく集まるところにはこれでもかというくらいの人の群れができて、さながら民族大移動とでも形容できそう。

品川駅。JRから京急線に乗り換えるまでの駅構内、いたるところに増設設置されたロッカーを目当てに人が集まりひしめき合い、荷物の整理に勤しんでいる。京急の改札前は大勢の入る人と出る人がすれ違う。ホームで羽田空港行きの電車を待つ。空港でのんびりしている時間もなさそうだったので、京急線ホームでみつけたセブンイレブンで昼食用の軽食を買い、搭乗口前のベンチでさっと食べることにした。おにぎりを買い終わってから全品100円セール中だったことに気づく。セール中であることを知っていたら高いおにぎりを買ったのか、というと結局はいつも食べている好きなものを買うのだろうし、それでいいのだが、セールを知らずに買ったということがなんだか損をした気にさせてくる。

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羽田を出発して石垣島までは3時間で到着する。出発してから30分ほどたったころ、機内のモニターをみると愛知上空を通り過ぎていていた。親戚が愛知に増えたこともあり、愛知には今までにはない親近感を覚えている。近そうでそう近くもない、しかし決して遠くもない。そんな距離感だが、空を飛んでしまえば30分たらずで着いてしまうのかと思うと時間と空間の整合性をうまくとることができない。

ANAの機内誌 翼の王国。旅のはじまりの楽しみの一つ。吉田修一さんの「空の冒険」が連載されているから。単行本化されたものはもちろん読む。ただ、あの旅のエッセーを、実際の旅路で、目的地を目指す機内で読むというのは、始まったばかりの自分の旅の先に何かいいものが待っていそうな、そんな心持ちにさせてくれる。

今回の「空の冒険」は、網走港からオホーツク海へ出て流氷を見に行った話。「オホーツク、リュウヒョウ」。もう92回も連載している。すごい。

”甲板で雄大な景色を眺めていると、少し離れて一角で歓声が上がった。何かと思って近寄ってみれば、1羽のカモメが甲板の手すりにちょこんと止まっている。人間にも、この流氷ツアーにも慣れているカモメらしく、乗客たちが近寄って写真集を撮っても、「かわいい、かわいい」とそばで声を上げても、まったく動じる様子がない。逆に、自分を取り囲む人間たちを、なんとも悟りきったような顔で眺めている。しばらくの間、カモメは人気者となっていたが、写真を撮り終えた乗客たちは、再び壮大な流氷の景色に戻っていく。置き去りにされ、飛び立つかと思ったが、カモメはそれでもじっと手すりに止まっている。当然のことだが、このカモメ、毎日この景色を見ているんだよなと思う。一面の氷の世界で生き、たまにやってくる流氷船で羽を休め、また飛び立っていくんだよなと。そう思うと、なんだかこのカモメが、人生についてとても大事なことを知っているような気がしてくる。もちろん、「知ってるでしょ?」と問いかけたところで、鳥っぽく首を傾げるだけだろうが。 – 空の冒険 第92回 オホーツク、リュウヒョウ より”

「知ってるでしょ?」〜の表現がなんとも吉田修一さんらしくて、とても好きだ。

”北海道というところが、幸福のすべてが詰まっている場所に思えた。人生を知るカモメがいて、逞しい若者たちがいて、そしてタラバ蟹は湯気を立てている。ああ、また行きたい。すぐにでもまた行きたい、と思う。- 空の冒険 第92回 オホーツク、リュウヒョウ”

これから僕が向かうのは、石垣島。いま、北海道の、流氷の話を読んでも、正直なところ気持ちはそちらに向かわない。向かう先ははるか南。では、冬になったら行こうか、ともならない。今は4月。流氷をみられるまで、まだまだ時間もある。冬が待ち遠しい時期でもない。夏がすぎる頃には、この話を思い出して、網走への翼を広げる計画を立てるのだろうか。まだわからない。

沖縄にはきっと、人生を知る牛がいて、若々しいおばあがいて、そして八重山そばは湯気を立てている。これから行くのに、もう、また行きたいと思ってしまう。

飛行機に乗ると願い事をする癖がついた。空に近い分、地上でお願いをするよりも叶いそうな気がする。
空の冒険の中の一節に、そんな話があったように思う。

旅行中、天気が荒れないことを願うばかり。