100分de名著 アーレント 全体主義の起源 第2回 「人種思想」 の視聴メモ

第2回は、帝国主義の始まりと、差別意識が人類に優劣を付けさせる人種思想が民族的ナショナリズムへと変わっていく過程に迫る。

帝国主義がどのように人種思想を生んだか

帝国主義

・全体主義を形作った要素の一つ。
・国民国家の中で同質でないものを内部の異分子とみなす意識。
→人種主義に進化

人種主義が拡大することで国民国家自体の根幹が揺らぎ始める。

異文明との出会い

19世紀末。
ヨーロッパ人はアフリカ大陸に進出。南アフリカで西洋文明とは異なる暮らしをする人と出会う。

国民(ネイション)は領土、人民、国家を歴史的に共有することに基づいている以上、帝国を建設することはできない。国民国家は征服を行なった場合には、異質な住民を同化し、「同意」を強制するしかない。彼らを統合することはできず、また正義と法についての自らの基準を彼らにあてはめることもできない。そのため征服を行えばつねに圧政に陥る危険がある。

・国民国家として法の保護を与えることはできなかった。
→帝国主義の大きな矛盾。

国民国家は征服者となる場合、必ず被征服民族の中に国民意識と自治の要求とを目覚めさせることになるが、こうした要求に対して、征服者となった国民は原理的に無防備だった。

・被支配者:なぜ支配されなければならないのかという疑問
→自治の意識の芽生え

・支配者:その意識に対抗するための政治的な支配装置が必要
→人種思想の誕生

アーノルド・ゴビノー:人種理論を展開
→人種思想を推し進めた要因の一つ

アフリカに根を下ろした人種思想は、ヨーロッパ人が理解することはおろか自分たちと同じ人間だと認める心がまえさえできていなかったような種族の人間たちと遭遇したとき、危機を克服すべく生み出した非常手段だった。

・アーラントはジョゼフコンラッドの「闇の奥」という本を引用

小説に登場するクルツ = 地獄の黙示録のカーツ大佐のモデル

・アフリカ支配はキリスト教的な神格化がゆがんだようなもの。
・自分たちから比べると進化の段階が遅い人間だとみなした。導いてやらないといけない。
→人種主義思想としてヨーロッパに戻ってくる。

人種思想は「国民国家」の構成員が自分のアイデンティティーを強化するためのツールになってしまった

人種思想がドイツにおいてどのように変化したか

ドイツの帝国主義

・1871年ドイツ統一
・植民地進出に出遅れる。
→ドイツはヨーロッパ大陸で支配地域を広めていく=大陸帝国主義
・ドイツ帝国は東ヨーロッパ、バルカン半島に進出
→第1次大戦の原因の一つ
・ドイツ帝国は敗戦
→ワイマール共和国の誕生

ドイツ民族の土地を取り戻そうとする民族的ナショナリズム

血の共同体として民族の統一を目指す。

政治的に見れば民族的ナショナリズムの特徴は、自分の民族が「敵の世界に取り囲まれて」、「一人で全てを敵とする」状態に置かれているという主張である。この見方からすれば、この世界には自分自身と自分以外の他の全てとの間の区別以外にはいかなる区別も存在しない。民族的ナショナリズムはつねに、自分の民族は比類なき民族であり、その存在は他の諸民族が同じ権利をもって存在することとは相容れないと主張する。

ドイツ民族の伝統的な居住地域は大陸の東の方。そこは今は他国、他民族が暮らしている。


ドイツの歌:ネオナチズムが台頭して危ないという時にまたこの歌が聞こえてきそうだという文脈で引き合いに出される

nationとfolk

・nationは自分たちの一つの政治的な単位
・nationとは別の概念としてのvolk(民族) 1が意味を持つ。
・先祖が住んでいた土地も民族として意味のあるもの。
→民族的ナショナリズムの始まり

補足:
ワンダーフォーゲル運動はもともとはドイツの青年運動。
青年たちがドイツ的な土地を渡り歩いてドイツをもう一度体験しようではないか、という運動。

血族共同体という意識

・国民国家の枠組みが揺らいでいく。
・ナチスが出てくる土壌ができてくる。
・経済的な意味での閉塞感と政治的な要因が絡む
→自分たちが発展する地を確保する必要がある。大陸の東に進出するしか手がない。となっていく。

観念的な喪失感(敗戦による土地の喪失。民族的な喪失感)が実態化(東への進出)してくる

1914年 第一次世界大戦

・帝国主義同士のぶつかり
・ヨーロッパは自国にいた他民族を追放
→難民・無国籍者が生まれる

18世紀も19世紀も、文明国に生きながら絶対的な無権利・無保護状態にある人間を知らなかった。第一次世界大戦以来、どの戦争もどの革命も一様に権利喪失者・故国喪失者の前例なき大群を生み出し、無国籍の問題を新しい国々や大陸に持ち込むようになった。

・無国籍者こそ戦争の最も悲惨な産物。
・どの国家も受け入れられない大量の難民。
・どこからも法の保護を受けられない存在。
・人間が生まれながらに持っているはずの権利まで失ってしまった。
→ヨーロッパの人権の概念を覆した。

今、政府の保護を失い市民権を享受し得ず、従って生まれながらに持つはずの最低限の権利に頼るしかない人々が現れた瞬間に、彼らにこの権利を保証し得るものは全く存在せず、いかなる国家的もしくは国際的権威もそれを護る用意がないことが突然明らかになった。

・こうして普遍的な人間性は失われ、国民国家の内部でのユダヤ人すべての人権を奪うという全体主義へと時代は加速していく

・建前:
普遍的な人権があれば何処かの国が引き受ける
・本音:
nationをベースにnationの利益を守ろうとしてきたのだから、属していない人間まで守ってやる義理はない

という意識が大戦後に露骨になってきた

普遍的人権 と nationの利益。どちらを優先するか 
→nationの利益を優先せざるを得ない
→現代の難民問題も解決策がない

国家を強化するための同一性というのが予想を超えて人々に求められるようになってきた
普遍的人間性の理想の限界

Notes:

  1. フォークダンスのフォーク。もともとは民衆を意味する。