11月4日放送分のメモ
音楽評論家の村井康司さん/シンコーミュージック・エンタテイメント書籍編集者の播磨秀史さん

M1「Maple Leaf Rag / ガンサー・シュラーとニューイングランド コンサバトリー ラグタイム アンサンブル」

村 ジャズの基になった音楽。昔の19世紀の譜面を使って演奏したもの。音楽としては100年以上前のものですね。これが19世紀おしまいくらいの北米大陸のわりと南の方ではやっていたタイプの音楽です。リズムとかメロディーは初期のジャズと全く同じと言っていいですが、大きな違いは、ラグタイムには即興演奏がないということ。全部楽譜通りにやっていました。これがだんだん崩れてきて、自分が好きにやる分が増えてきて、ジャズのある部分になっていったと考えられています。

山 今年録音100周年。それ以前の音楽ということですね。

村 そういうのって録音が残っていないので想像するしかない。ラグタイムは楽譜が残っているので演奏するとわかる。そうじゃない黒人音楽ってたまたま聞いたアメリカの人が書いているが、こんな楽器使っているよとか、歯をむき出して踊っているとかね、メロディが書いていないのでね、面白いところです。

山 ジャズ史ということですが、とても分厚いです。360ページもある。これはもともと雑誌で連載されていたものですよね。

村 ジャズジャパンという月間のジャズ雑誌で76回連載したものと、小学館から出ているジャズボーカルコレクションで連載していたボーカルの歴史26回分を組み合わせて素材にして加筆訂正して一冊にしたものです。

山 内容としては、

村 ジャズが生まれる前のことが書いてあって。第一部として。それから20年代、30年代のスイング、40年代のビバップ、現在の音楽まで、時代を追ったジャズの歴史を他の音楽のことも含めて書いています。書籍案内もあって、この本を読んだ後にもっと詳しいものを読みたいという人のために240冊くらい紹介しています。CDガイドも、本の中身にあわせて載せています。ジャズが生まれる前のものを知りたい人にはこのCDというように。全部で420枚。ジャケット写真付きで、1つにつき160字くらいの説明を書いています。一夏というか、一冬くらい楽しめます。

山 ラフカディオ・ハーンはカリブ海で何を聞いたか?とか。面白いですよね。くすぐられます。

村 日本に来る前にニューオーリンズにいたんですよ。結構長い間いて、カリブ海についての文章も書いているんですよ。

M2「Black Beauty / デューク・エリントン」


村 デュークエリントンのオーケストラが1928年に演奏した曲です。

山 ジャズの歴史というとこの辺から始まるものが多いですが、それ以前のことも書いているんですね。

村 そっちの方が面白いかなと思って。本のテーマがいくつかあって。一つはジャズ以外のことも書こうというもの。ジャズが生まれる前のラテンの音楽だったり、クラシックだったり、ラグタイムだったり、同時代のアメリカの田舎の方ではカントリーアンドウエスタンとか、ブルースの基になった音楽がある。そういったものが混じって20世紀になってジャズが生まれたというのを書きたかった。いままでのジャズの歴史はそこを書くものがほとんどなかったですね。

播 企画を頂いてから周辺事情を調べると、ジャズ通史本は最近出ていなくて、村井さんが最近のものも聴いていてよくご存知というのもあって、その視点で書くなら面白いなと思いました。断片的に聞いていたものが読んでいく中で構築されていく、繋がって行くのを感じましたね。

村 中身の感想を聞きながら、構成を考えつつ。播磨さんは逆にジャズマニアじゃないから読者としていいんですよ。

山 デザインすてきですよね。

村 ニューヨークの1952年の写真です。マンハッタンの街路に人がぽつんと一人で立っている写真です。楽器も出てこないしどこがジャズなんだという感じもしますが、この写真が気に入って、これにしてくださいと言った。

播 1950年代のニューヨークの写真を使おうかというのは話していました。

村 デザイナーは名久井 直子さん。今売れているデザイナーさん、。文芸系の小説のデザインをたくさんしている人。大変かっこいいデザインをしてもらったかなと思っています。

山 どんどんジャズがおしゃれになってきてますよね。

村 イメージが変わってきましたね。昔は「夜の大人の音楽」みたいな感じでした。最近は若い20代前半くらいのリスナーが増えていて、新しい側面が生まれている気がします。

播 かつては、シンコーミュージックからジャズの本は出していました。ここ数年になって何冊か出ています。ジャズニューチャプターというシリーズを出していたり。ロバートグラスバーのあたりと最近のジャズをメインに扱っています。シンコーミュージック的にも来ている。

村 今までと違うイメージが出てきて、そういうときにもう一度ジャズの歴史を新しい目で見てもいいんじゃないかなと思っています。

 

M3 Rocker / マイルスデイビス9重奏団

黒の誕生というアルバムの曲ですね。ジェリーマリガンが作った曲。1950年

山 今日おかけしている曲の共通項は?

村 裏テーマの一つでもあります。ジャズって、割とみんなね、アドリブの天才がやるものだと思っている。当然そうなんですが、それだけじゃなくて、以外と、アンサンブル、つまり何人かの人間が譜面に書かれているもの演奏したり作曲するということもウエイトを占めているというのを、今までその辺は語られていなかったんですよね。今回は意図的にアンサンブル中心のジャズを持ってきました。綺麗なハーモニーや楽器の組み合わせの面白さが生きている音楽を選んでいます。最近ですとマリアシュナイダーとか、挾間美帆さんとか。

村 ソロだけよくて、後はどうでもいいやみたいな音楽はビバップの一部はそうでしたが、今はそんなことはないです。集団でやる。アンサンブルでチームプレイで。そういうのが見直されていますね。

山 新しい風が吹いてきている?

村 ひしひしと感じていますね。新しいジャズを聴いていると、10年前ともまた変わっている。随分と。例えば40年前も盛んでしたが、そのころとも音楽の質はかなり変わっている。そこに共通点があるであろうというのも裏テーマです。

山 裏テーマをなぞりながら読むのも楽しいですね。

M4「Corcovado / マイルス・デイビス ギル・エバンス」

1962年 アントニオ・カルロス・ジョビンというブラジルの作曲家の代表曲です。

山 本をまとめるの大変ではなかったですか?

村 そうですね。連載をもとにしていますが、字の間違いがないかとかを確認したりもするので。2000円なんですが、文字が30万字くらい入っているので、文字単価としてはものすごくコスパがいいです。

山 文字単価というの初めて聞きました。できればCDガイドがカラーだったら嬉しかったなって。そしたら単価が上がってしまいますね。

村 極端な言い方をすると、コロンブスがアメリカ大陸をに到達してから今年まで、大風呂敷を広げています。書く方も結構面白かったですね。いろんなことを調べながらでね。

M5 Sky Blue / マリア・シュナイダージャズオーケストラ

村 ジャズの作編曲家の曲です。2007年。今すごい人気でています。毎年日本に来て素晴らしい演奏をしています。代表的な作品です。

山 音楽を勉強している学生さんにとっても憧れの方ですよね。

村 そうですね。最近はジャズ科の学生さんが増えていますが、一番の憧れの的、アイドルですね。マリアシュナイダー。

村 すごくわかりやすく書こうと心がけた。ギャグもかましています。寝っ転がりながら読める本になればいいかなと。