2017年11月25日

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】

山 今日はどんなジャズ四方山話を?

青 1月後はクリスマス。だんだん前倒しになっているじゃないですか。クリスマスが。昔なら10日とかそのくらいでね。クリスマス事情がぼくの若い頃と全然違う。

山 ハロウィン終わったらすぐクリスマスで。

青 クリスマスセールにすぐ入っちゃう。

山 アメリカはね、大事なマーケットですからね。日本でもなぜそうなる?というのはありますが。

M1「White Christmas / Bing Crosby」

青 これなんだよね。昔はこれだった。これしかなかった。

山 子供の頃から聞いていました。クリスマスソングといえばホワイトクリスマス。

青 アーヴィング・バーリンが作った名曲。1942年の映画のためにかかれたものですね 1。ぼくはよく知らないのですが、ここに青木啓さんの解説があって、この方面ではピカイチの方ですね。コーラスがはいってます、アレンジもこんでいて、書き込んであるが、18分で録音が終わったという話が有名らしい。つまりは一発でコーラスも全部やっちゃった。1942年5月29日わずか18分で録音という逸話があった。すごいです。クリスマスというと、若い子達は男女でデート誰にするとかで盛り上がってるんでしょ?

山 それはもうひと昔前の話。バブルの頃。今はそこまでではないです。あの頃は半年前にホテルが埋まっちゃうとかね。

青 僕の子供の頃は、キャバレーでお父さんが家庭を顧みないで呑んだくれて。サザエさんみたいなね。

山 鼻眼鏡かけてね。なぜかクリスマスなのにケーキじゃなくて寿司の箱をぶらさげたりして。

山 言い忘れてました。今日はクリスマス特集です。

青 当時のラジオの放送録音です。ロイヤル・ルーストというところで。カンカン聞こえるのは機材を調整している音ですね。ライブ録音なので全部入っています。リクエストがあって、ロイヤルウエストの生中継でね、今日はクリスマスだからやろうじゃんかって。チャーリーパーカーです。

M2「White Christmas / Charlie Parker」

山 2曲続けて。ホワイトクリスマスでした。

青 さっきはなしましたが、クリスマスの事情が違うのね。

山 今も盛り上がりはしますが、お金は使わない。そういう時代です。

青 ある一時期から家庭的になった。というのも聞きますね。サザエさんでいうと、家にケーキを用意してね。

青 クリスマスっていうとね、ジャズではこの話をしないといけない。クリスマスの夜にレコーディングをした、マイルスとモンクのクリスマスの喧嘩セッション。喧嘩かどうかはわからないが、諸説あって。確かに、このセッションの時ね、マイルスがふいているときに、モンクは弾かないでくれというのがあって、険悪な雰囲気になっていて、これから聞いていただくような事件が起きるんですが。とりあえず言えるのは、マイルスのバラードは当時、非常にホリゾンタル、水平的なメロディがうまい、そこに専念している。モンクっていうと縦ノリ、それがちょっといやだなというのがマイルス的な意見でね。なにもモンクが嫌いだからとは言ってはいないと思うが、それに腹を立てたんじゃないかというのがある。

山 クリスマスの曲というわけではないですね。

青 そうですね。クリスマスの日に演奏した曲ということで。

M3「The Man I Love / Miles Davis」

https://youtu.be/Bl57wnR73j4

青 メンバーは、ミルト・ジャクソン、パーシー・ヒースのベース、ケニー・クラークのドラム。ここにジョン・ルイスが入るとモダン・ジャズ・カルテットですね。ケニー・クラークは初代のドラマーなので。このセッションってバグス・グルーブの方に収録されているんだけどそっちは文句なく名演です。こっちは事件が起きたから。要するにモンクがソロをやるんだけど途中でやめちゃうのね。ベースの音がやたら響いているとこね。そこで壁に寄りかかったマイルスがやれやれといって仕方なく弾き始める。でもね、昔の大和明先生のライナーでも、最初から機嫌が悪い、険悪で、モンクはとうとう弾かなくなったという話が書いてある。そのまえから音数が少ない。モンクのソロですね。なんか考え事をしていて、たぶんぷっつんしちゃったんだと思う。喧嘩とかじゃなくて、自分のソロをどうしようかとおかしくなったんだと思う。モンクは当たり前にそういうことをする人だった。モンクという人は音が止まる。音がとまると、ベースの音が聞こえてきて、あーいいなってなったのかも。そういうの好きなんだよねモンクは。

山 彼なりにそういう演奏をしようと?

青 そうではないとおもう。この状態もいいなと思ったんじゃないかと。パーシーのベースがとんとんとんと流れていくの、いいな。と私が想像している。で、壁によっかかってていたマイルスが吹き始めて、途中で変えて。ただそういう話じゃないかな。実は喧嘩とかじゃなくて。ていうかマイルスの自伝では、喧嘩なんかしていないと書いている。モンクは好きだし、ただ、自分のスタイルと合わない。ただそれだけだったと。

M4「Santa Claus Is Coming to Town / Paul Bley」

これもちょっと異様ですね。チャーリミンガスのベースと。Paul Bleyのデビューアルバムになるのですが、正規のアルバムにはこの演奏は収録されていません。なぜなら、イントロですこしごたごたしていますが、時間がきちゃったので、あたふたしておわらせなきゃいけなかった。一説によるとブレイの椅子がなくて、立ったまま演奏したとか逸話がある。

青 本当にあたふたしていますね。

山 全然ロマンチックロマンチックじゃないですね。

青 サンタが街にやってくるをかけるにあたって、ビル・エヴァンスの余興でやってる録音があって、それをかけようと探したのですが見つからなかった。エヴァンスのふざけてやってる録音が残っているんです。同じ曲ばかりやっていてもあれなんで、ホワイトクリスマスもいいんだけどいまは、この曲かなと。

M5「The Christmas Song~Autumn Leaves / Mel Torme」

青 この曲の詩はなんと夏に書いたそうです。クリスマスの詩を。トーメに会ったことあるんですよ昔。珍しいと思う。もしかしたらこの録音の時だったかも。1990年の日本のライブ。トーメってものすごい才能がある。ザ・ルーシー・ショーに何回か出ていて、2回出てたの知っていますか?ってトーメにいったら5回だって返された。非常に鮮明な記憶力をもっていて、作家でもあるし、ペンネームでミステリーを書いていたり。バディーリッチの伝記も書いている。この人ほど才能あるふれ人はいない。ま、やっぱりうまいですね。

山 私の持っているトーメのとも違いますね。

蒼 歌い込んでいるから、いろいろ細かいところ変えているんですよね。

Notes:

  1. スイング・ホテル ビング・クロスビー、フレッド・アステア主演、アーヴィング・バーリン音楽