【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
「ジャズトーク」青木的今年のアルバム五選をご紹介いただきました。

や:山本かおるさん
あ:青木和富さん

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や:12月最後の放送ですのでジャズトークです。1年を振り返るということで。

あ:毎年やっていますが、個人的な意見になるのはしょうがないと諦めてもらうしかないですね。ただ、変なアルバムは選んでいません。一曲目からヴォーカル曲です。今年に出会ってというか昔からしっている曲ですが、最伊藤君子さんの美空ひばりを歌う。これすばらしかった。伊藤さんは僕と同じ世代。子役として24の瞳に出ていたり、経歴が長いですね。小学校で撮影したときのエキストラとしてでていた。 1

や:よくそんなのこと知っていますね。

あ:撮影隊きていたから。小豆島に。子供にとってはすごい記憶ですよね。美空ひばりも見ているんですよ彼女は。記憶の集大成かな。一つのルーつだと思います。美空ひばりは伊藤君子にとっての歌を歌うきっかけですよね。本人じゃない私が言いいますが。本当は東京キッズから始まるんだけど、ジャズ番組だからジャズっぽいこれを選びました。日野皓正さんがゲストで入っています。

M1「恋人よ我に帰れ / 伊藤君子」

『Kimiko sings HIBARI~伊藤君子、美空ひばりを歌う』

あ:普通のカバーに似ているが、特にそういう意識はなく、録音するまで聞かなかったそうです。やっぱり美空ひばりが体に入っているんですよね。言い忘れたけど、アレンジャーもやっているピアノの宮本貴奈さんが素晴らしかった。

M2「Passin’Thru / Chars Lloyd New Quartet」

『Passin’Thru』

あ:ベテランから。チャールス・ロイドです。60年台から活躍している人。もう80過ぎたかな 2。あいかわらずすごい、というか何度もすごさが蘇る人なんです。うまいんですよ。チャールス・ロイドというと、最初のフォレスト・フラワーがヒットしました。キース・ジャレットとの有名なトリオがありますが、今回の「Charles Lloyd New Quartet」は初代のカルテットの次にすごいと自分で言っている。チャールス・ロイドが、ジェイソン・モラン(p)、ルーベン・ロジャース(b)、エリック・ハーランド(ds)と組んでいます。この辺は詳しい人はよく知っていると思いますが、今の時代の名士たちですね。このアルバム『Passin’Thru』は全部ライブ録音されている。いまからかける曲『Passin’Thru』は、自分がリードアルバムをだすまえに、チコ・ハミルトンのグループにいたときのアルバムのタイトルです。古い曲なんですけど。このアルバムの中で一番ホットですね。

M3「Dear Family / 桑原あい 石若駿」

『Dear Family』

あ:まあ、若い人も大事なんで、やっぱりあいちゃんかな。彼女は今年はもう一枚出していますね。向こうで録音した一枚。日本人のアルバムとしてはこっちの方が意味がある感じがしています。石若駿のドラムもすごい大活躍。あいちゃんなんと、ベース抜きのドラムとピアノという構成。あんまりないと思います。あいちゃんの話ではピアノがいかに打楽器であるかが分かったというね。すごいね、斬新なことを実験というよりも挑戦という感じでやっている。こういうアンサンブルを作る。若い人が挑戦するのはいいことだなという思いでこちらのアルバムを選びました。テレビ朝日のテレビ番組のテーマソングとして使われていますね。いまからかけるのもテレビバージョン。聞けばすぐわかると思います。

や:こんなに華々しく演奏できるんですね。

あ:あいちゃんはエレクトーンから来た人。エレクトーンがあれば、足さばきでベースもできるし、いろいろできる。それが彼女にとってある種ピアノに対するコンプレックスがあるのではと思う。だからもうエレクトーンはやらない、というね。最近の彼女のピアノはよくなっています。ピアノ演奏に関してはかなり自信を持ってきているんでしょうね。当たり前ですけどね。

M4「Don’t Think Twice It’s Alright / Chris Thile & Brad Mehldau」

『Chris Thile & Brad Mehldau』

あ:今の曲が忙しいので、うるさいというと怒られますが、次はしっとりとしたやつ。クリス・シーリーはカントリーとかフォークとか、アメリカントラッドの実力派マンドリン奏者ですね。これと、ブラッド・メルドーが共演している。メルドーっていろんな人とデュエットをしている。前作はジョシュア・レッドマンだし、昔はオペラ歌手とやったりね。歌伴とかすごいうまいんですよ。これも全然問題ない。楽しい。部分的なんだけどメルドーが歌を歌ってハモっている。弾きながら途中でハモったり。

や:途中で興が乗って歌った?

あ:そうではないですね。予定で歌っている。ちょっとハモったり、音をはずして乗るように歌を歌ったり。二人の声が似ているからどっちがどっちがわからない。どっちが歌っているのか心配になる。どこにも書いてないから。両方ともボーカルって書いてあるだけで。しかもよくきくと、即興的な掛け合いがすごいんですよね。

や:このアルバムはどこにおいてあるんでしょうか?

あ:一応ジャズでしょうね。ブラッド・メルドーですからね。ただまあ、アメリカントラッドが好きな人はシーリーで来るかもしれない。

M5「Broken Leg Days / Brian Blade &Fellowship Band」
『Body And Shadow』

最後の曲。ブレイドというと、やっぱりすごいひっぱりだこのドラマーですね。ハンコックとかショーターとかとジョニー・ミッチェルとかとやっている。ノラ・ジョーンズの最初のアルバムもそうだったかな 3。忙しい人ですね。ドラマーって自分の音楽をやりたがる。活躍する前から友達たちと作っていたザ・フェロウシップ・バンド。メンバーが変わっていないんですね。音楽を追求するグループ何だと思います。去年か一昨年に見たけど、ライブハウスはアンコールなんてない。最後の曲で、はい、終わったって感じ。アンコールをうけつけない。ステージがストーリーになっている。構成されている。それで完結。

や:知らないと、サービス悪いなとなりますね。

あ:そうかもしれない。ブレイドの演奏を聞きに来た意識が強いのでね。ライブ自体も作品、ということなんですね。というわけで、どれを選べばいいかわからなかった。これはね、とにかくこれを選びました。

や:すごくきれいな音色ですね。

あ:そうですね。ECM的というとマニアックですが、サウンドがきれい。この音楽のテーマ、タイトルが「ボディアンドシャドウ」。肉体と影。本物と象徴というか。すごい文学的なんですね。ちょっと極端な言い方をすると、このグループはそういう表現はこうだと突き詰めて考えている、ある種の一心同体な集団なのではと空想している。

や:曲のタイトルは?

あ:カワードがね、足をけがして半年くらいブランクがあって、そのときに考えたらしい。そこに意味はないですね。

や:やんちゃな人だと思っていたので、イメージと違って面白い。

Notes:

  1. 伊藤君子さんは1946年生まれ。子役としてでていたということで、おそらく1954年木下恵介監督版の映画にエキストラとしてでていたということでしょうか。次の映像化は1964年のテレビドラマ版で、その当時の伊藤さんは18歳。ラジオを聞いた感じだと、伊藤さんが子役として出演した際に美空ひばりと遭遇した、という風にもとれるのですが、美空ひばりは二十四の瞳には出演していないので、美空ひばりをみているというのは二十四の瞳とは関係のないタイミングで出会う機会があったということでしょうか。
  2. 1938年生まれの79歳