マッキントッシュのHPで公開されている「100 Secrets of Mackintosh

各界のプロフェッショナル100人が語るマッキントッシュの魅力を収めたショートフィルム企画。100本もあるので、全部見るのは大変。つまんで覗く。松浦弥太郎さんもいらっしゃる。

以下、弥太郎さんの発言書き出し

マッキントッシュのコートには、1つすごく、自分にとって大切な思い出があります。

ロンドンにいくと必ず泊まる、セントジェームズ通りの”デュークスホテル”という小さいホテルがあるんですけれど、道の突当りにある、もともとは古い邸宅だったところをリノベーションした本当に良いホテルで、ドライマティーニですごく有名なので知っている方も多いと思います。

ある日、ロンドンにいてそこに泊まっていて、雨が降って来たんですね。
雨が降ってきて、外を歩きたかったので傘を貸してくださいとフロントの人に言ったら、”老紳士”というか、けっこうお爺さんみたいな男の人に言ったら「ここにあなたに貸す傘はない」と言われて、あーそうなんだと思ったんですけど、コートはあるよと言って貸してくれた。

それがマッキントッシュのコートで、びっくりしましたよね。
日本のホテルで傘を貸してくれと言ったら必ずきちんとした傘を貸してくれますけど、ロンドンで傘を貸してくれって言ったらコートがでてきたよって。

かっこいいなあと思って。

マッキントッシュのゴム引きのコートにものすごい年季が入っていて、おそらく10年くらいはそこのホテルに置いてあって、いろんな人が着たんだろうなあというようなものだったんですけど。

その旅行中ほとんどの日が雨がパラパラ降っているシーズンだったので、毎日僕は返さないで、自分の部屋に持って帰って、また次の日の朝に着て外に出掛けて、というような毎日を過ごしてました。

日本に帰るときに、「どうもありがとう。このコートがあってとっても助かりました。」と返そうとしたら、毎日着ていたから、それも年季の入っているものなので「もしよかったら、そんなに気に入っているのなら君にあげるよ」と言われたんだけど、よく内側を見たら”デュークスホテル”と太いマジックで名前が入っているので、これは僕が持って帰るわけにはいかないからここに置いて行きますと返したんですね。

それから1年くらい経ってもう一度ロンドンに行く用事があって、いつものようにデュークスホテルに泊まって、天気のいい日に冗談で傘を貸してくれと言ったら「傘はないよ」とまた言われて、「君のお気に入りのコートがまだここにあるから、コート持っていけ」って

僕はそのコートを借りて、そのシーズンは寒かったので、雨は降ってませんでしたけど、毎日借りて着ていたって、そんな思い出があります。

だから、僕にとってマッキントッシュのコートというと、上質な道具としての、装いというよりも、毎日の中での質の高い道具感が強くて、
10年、20年、自分の身の回りに置いて、手入れをしながら着ていくと、きっと友達のような1つになるんじゃないかなと思います。

そんなデュークスホテルのコートをまた、僕はロンドンに行ったときに、借りて、街を歩きたいと思っています。

このエピソードを聞いた素直な感想は「ずるい」でした。
心の汚れた人間にはこんなエピソードが本当にこの世に存在したのかと疑ってしまうような素敵さ。かっこよさ。弥太郎さん本当ですか?
真偽の程は確かめようがないし確かめる意味もないし、疑っておいてなんですが本当の話だと思っているし。そしてやっぱりこういう話をさらっと披露するあたり弥太郎さんだなあなんて風にも思うわけで。
他の著名な方の動画では「マッキントッシュのここが素晴らしい、ここがマッキントッシュらしさだ、私はこのマッキントッシュを持っていて〜」というような語り口が多い中、弥太郎さんはこう来る。
マッキントッシュに限らず、弥太郎はさんは一つ一つの物事の物語を大切にしているのだと思います。
何気無い出会いも、自分だけの物語なんですよね。
マッキントッシュ、欲しいなあ。